HRsDアジア財団(公益財団法人 日中技能者交流センター)
理事長 岡島 真砂樹
あけましておめでとうございます。
旧年中は、当財団に対しまして、会員の皆様をはじめ関係各位にひとかたならぬご理解・ご協力を頂き、ありがとうございました。
おかげをもちまして、昨年は新型コロナウイルス感染の影響が少ない中で、技能実習生の入国が順次すすみ、特定技能外国人の受け入れも増えてきております。
本年は、昨年6月に成立した「育成就労制度」に関する基本方針や運用方針等の具体が示され、2027年の施行にむけ動き出す年となります。その動向に応じて関係の皆様とも情報や課題等を共有しながら対応策の検討を進めてまいります。
当財団は、今後もアジアの若き人材育成や相互理解に基づく交流等を通して、各国の発展に寄与してまいる所存です。
関係各位からの信頼を得て、その期待に応えられるよう、役職員一同尽力してまいりますので、本年も皆様のご支援・ご協力をお願い申し上げます。
本年が皆様にとりまして健康・安全で、良い年となることを心からご祈念申し上げ、新年にあたってのごあいさつとさせて頂きます。
昨年は命や人権の尊さ、安心・安全な暮らしの大切さを痛感されられる年となりました。年明け早々に能登半島地震が発生し、家屋の倒壊をはじめ、津波・火災・土砂崩れ等により甚大な被害をもたらしました。また、9月には同地域で豪雨災害も発生し被害が拡大しています。多くの尊い命が奪われるとともに、地震から1年が経過した今も避難生活を強いられている方が少なくありません。
私は能登町の出身であり、地震発生時、実家に帰省をしていました。震度7の揺れに遭遇するとともに、母親と共に8日間の避難所生活を送りました。その中で感じたことは、地域の人のつながりの強さです。
今後どうすればいいのか様々な不安や心配が渦巻く中、食事の準備や避難所の運営、お年寄りや困っている方への声かけ・お世話など、地域の皆さんが助け合い、支えあっている姿がありました。
震災後しばらくして、能登町のイカ釣り漁の船員としてインドネシアから来ている20人の技能実習生に関するニュースを目にしました。彼らの宿舎2棟のうち1棟が倒壊しましたが、現地を離れず一つ屋根の下で実習生同士が協力しながら、地域住民と共にがんばっているとのことでした。当財団関係の実習生ではありませんが、私にはこの実習生が能登の重苦しく暗い海を照らす「漁火」のように感じました。
その後全員が実習に復帰したとのことです。
当財団には、全国に1800人を超える実習生・特定技能外国人等がいます。自分の国を離れ、各々が様々な思いや目標をもって各地域で実習に励んでいます。こうした実習生がやりがいをもってがんばっていけるよう、私どもの理念である「ひととつながる」「ひとをささえる」「ひとをそだてる」を大切に、一人一人に寄り添ったサポートをしていかなければと意を強くしています。
当財団は、1986年の設立以来、長きにわたり中国やベトナム等の送り出し団体や関係機関との連携を深め、事業を継続してきました。
新型コロナウイルス感染の影響で交流がしばらく途絶えていた中国のパートナー3組織を昨年10月に訪問し、シンポジウムや業務会談等を行いました。実習事業では中国との関係が弱まってはいますが、私どもと同様に中国側もこれまでの友好関係は大切にしたいとのスタンスに変わりはなく、今後の連携のあり方について有意義な意見交換となりました。とりわけ、財団の事業の柱の一つである日本語教育事業では、コロナ禍の期間「スキルアップオンライン研修」を実施し、多くの参加者と高い評価を得てきていますが、さらに実施方法を改善する方向性を確認することができました。今後は、実習生を幅広く確保するため他の国の団体とも友好関係を築き、一層の信頼を得られるよう事業を展開していかなければなりません。
当財団は、2026年に設立40周年を迎えます。新たな制度の施行にむけ、当財団を取り巻く課題は山積していますが、引き続き実習生・特定技能外国人を中心に据え、国際貢献・国際交流に資する諸事業の推進・発展に努めてまいります。
当財団は設立以来約40年近くにわたり、中国の政府関係機関や事業団体と研修制度、人材育成、日本語教師派遣事業を通じて交流を深めています。この間は両国の社会経済、行政等の状況が変化し、従来の交流内容から、新時代にあった新たな人材育成事業のあり方が求めれてきました。この度、新型コロナ感染拡大が沈静化したことを受けて、新たな関係発展に向けて当財団の岡島理事長を代表とする訪中団を10月14日~18日まで派遣しました。中国は2010年頃までは経済拡大を続けきましたが、その後は新型コロナウイルス感染拡大(2019年)もあり経済成長が減速しています(2024年はGDP4%台見込み)。世界経済に影響を与える中国は転換期にあります。中でも不動産市場や個人消費の低迷、過剰債務問題、若年労働者の雇用機会減少などの困難に直面しています。また、日本以上に中国社会は少子高齢化が急速に進んでおります。
今回、両国に共通の社会問題について、中国職工対外交流中心とシンポジウムも併せて行ってきました。また、来る日中技能者交流センター創立40周年(2026年)に向けた取組みの一環として共同事業についても意見交換するなど更なる関係発展に向けて動き出しました。
同協会とは、当財団が中国の大学に日本人日本語教師を派遣してきた経験を活かして、中国の大学の日本語教師を対象にスキルアップ研修を行っています。こうした研修をより効果的に行うために両組織間で今後の人材育成に向けた連携・協力を確認しました。
中国国際人材交流協会との会談
同交流中心の幹部が2024年4月に当財団を訪問しました。その折に「シンポジウム開催」の提案を受けたことから、今回の訪中を機に「両国の少子高齢化問題のシンポジウム」の開催が実現しました。少子高齢化が両国の共通の社会課題となっています。社会保障負担、労働力不足などへの対応が急がれます。
今回の共同シンポジウムを機に両組織間の共同事業など相互協力の在り方について協議しました。相互訪問を毎年実施するなど更なる高みにむけた関係発展を確認しました。
中国職工対外交流中心との会談
同交流服務中心は、これまで中国の技能実習生を日本に派遣するなど技能向上の取組みも行ってきました(2021年まで)。現在、同交流服務中心は、①技能五輪国際大会へのサービス提供②職能技能学校2500か所で指導する事業を行っています。2026年は上海大会で、2028年は日本の愛知県内で技能五輪国際大会が開催されます。当財団も技能五輪で連携できることがあれば、協力していくことを確認しました。なお、同服務中心には在中国日本大使館一等書記官(戸高氏)も同席されました。
※技能五輪国際大会とは、2年に一度開催され、青年技能者の技能レベルを競う競技会です。技能に身近に触れる機会を提供し技能の重要性などをアピールし、参加各国における職業訓練の振興と青年技能者の国際交流と親善を目的としています。
中国人社部国際交流服務中心との会談
当財団は2024年4月に来日した「中国職工対外交流中心訪日団」との合意による両国の共通課題に関するシンポジウムを北京にて開催しました。
両国に共通する社会的な課題として「少子高齢化に対応する課題」をテーマに様々な側面から現状を報告し相互理解を深めてきました。
現在、両国は深刻な高齢社会と少子化に直面しています(中国は60歳以上は人口の21%、特殊出生率約1・0%)。人口減少は労働力不足から経済停滞、年金等社会保障の負担増加、地域社会の低迷などの問題が指摘されています(人口オーナス(重荷・負担))。こうした社会構造の変化により、労働力不足が広がっていることから従来の「働き方」の見直しが求められています。
シンポジウムの最初の報告者として当財団の岡島真砂樹理事長から「日本の教員の長時間労働の実態と働き方改革」をテーマに改革の現状と課題について発表しました。
また、鮎澤和之専務理事の報告では「外国人労働者の増加と技能実習制度、特定技能制度の見直し」をテーマに日本の外国人労働者の現状や外国人の技能育成に向けた制度改革の内容変更を説明しました。さらに、当財団の村木太郎理事からは「日本における少子高齢化社会と労働力人口の減少」と題して、日本の現状と社会課題を説明した上で、その対応策について報告しました。中国側からも「少子高齢化に対応する中国労働組合の主な活動と成果」、「出産友好型社会の建設助力に関する中国労働組合の政策と措置」、「中国高齢化・少子化と対策」をテーマに、中華全国総工会の専門家と研究者(中国社会保障学会副会長兼年金部会会長、浙江大学国家制度研究院副院長)から報告がありました。
中国の少子化対策の取組みとしては「結婚・出産・保育・教育」の一体的な支援体制の整備、高齢化対応としては、多層的な老後保障(年金、介護、サービス)について、行政、労働組合の各分野における取組み事例が紹介されました。日本側の要点に絞った報告に対する中国側参加者からは理解が深まったなど、相互理解を深める有意義なシンポジウムとなりました。
発表テーマ ①:日本の教員の働き方改革 ②:少子高齢化に対応する中国労働組合の主な活動と成果 ③:外国人労働者の増加と技能実習生制度、特定技能制度の見通し ④:出産友好型社会の建設助力に関する中国労働組合の政策と措置 ⑤:日本おける少子高齢化と労働力人口の減少 ⑥:中国の高齢化・少子化と対策 |
シンポジウム会場
発表する岡島理事長
中国側発表者のみなさん
技能実習制度(団体監理型)では技能実習生に研修(講習)を義務づけています。この講習時間は実習活動予定時間(1年目)の1/6時間以上(例:1920時間の場合320時間以上)が義務づけられています。
しかし、入国する多くの技能実習生は、母国で来日前講習(6ヵ月以内に1ヵ月以上かけて160時間以上の講習)を受けていた場合は、来日後の必要な講習時間は短縮されます(実習活動予定時間の1/12である160時間以上が免除)。
講習では、日常生活や職場でのコミュニケーションに困らないために、日本語学習、一定の日本語能力を身につけてもらいます。
また、生活に必要な知識や技能向上の学習として、日本の法律や規則(含む社会生活ルール)・マナーを中心に講義を受け、例えば規則正しい生活スタイル、体調不良時の対応、自転車事故防止、公共機関の利用方法、買い物、ゴミの出し方、銀行・郵便局の利用方法、自然災害時対応など事例を交えて知ってもらいます。
また、技能実習生は企業配属前後(3ヵ月以内)に健康診断の実施も必要なことから、研修期間中に実施しているケースが多いです。
多くの技能実習生にとって、初めての海外生活が研修所です。研修生は講習のみならず、研修内の団体行動、日本の食事などを通じて体験を重ねてたくましく成長しています。
日本での技能実習活動が円滑に進むように日中技能者交流センターが悩みや相談に対応したり、毎月訪問したりして技能実習生を受入企業と連携して支援しています。
当財団は全国に9か所の研修所(委託)を有しています。今後それぞれの研修所を紹介していきます。
2024年11月13日(水)「第2回全国監査会議」を対面方式で当財団の役職員約50名の出席により開催しました。
冒頭岡島理事長より、「現状、技能実習生・特定技能外国人の受入れ状況は順調に推移している。
一方で当財団は、「人材育成」や「国際的相互理解の取り組み」なども柱に据え、事業を継続している。「人材育成」では、11月のニュースでも掲載したが、そう菜製造業務で実習中のベトナム国籍のフィさん(株式会社サンデリカ平塚事業所)がJITCO日本語作文コンクールで最優秀賞を受賞された。
また、「国際的相互理解の取り組み」では、10月に北京において職工中心との「少子高齢化」をテーマとしたシンポジウムを開催した。
下期においても受入企業の拡大と受入企業の要望に応じた対応をおこない、技能実習生・特定技能外国人の受入れの拡大に向け、役職員・関係者一同、力を合わせ積極的な取り組みを進めていく。」との挨拶がありました。
引き続き、塩田常務理事の進行で議事が進められました。それぞれの項目に沿って報告が行われ、それらに対して質疑応答、意見交換が行われました。
この監査会議を通じて、当財団における重要事項や日常における業務の留意・課題等が確認されました。
2024年11月14日(木)「地方ブロック代表者会議(合同開催)」を開催いたしました。会員企業23社38名の方々にZOOMで参加していただくとともに、当財団の役職員が参加をいたしました。
今回のブロック会議では、2027年実施に向けた「育成就労制度の法整備の現状」と「産業分野・業務区分の追加にあわせた特定技能制度の動向」について、(公財)国際人材協力機構(JITCO)実習支援部・斎藤副部長から説明をいただき、現状の動向等を確認いたしました。
当財団として、今後も育成就労制度の動向を把握し、会員企業との情報共有を引き続き努めていきたいと考えています。
育成就労制度の法整備の現状
・施行までのスケジュール(予定) 特定技能制度の動向
・「受入れ見込数の再設定」、「対象分野等の追加」について |
今回の「にほんごで ものがたり しませんか」は、株式会社ブラザーで働くベトナムから来日した3名の仲間から原稿をお寄せいただきましたので、ご紹介いたします。
※原文のまま掲載しております。
日本に来る前、皆は私に研修に行くチャンスがないと思っていました。合格通知を受け取った時、とても嬉しかったです。
時間が過ぎるのは速いです。今ではもう7年日本に住んでいます。研修を始めて、本当に多くの困難と試練が有りました。日本人の仕事はとても厳しいと感じました。毎日の作業で仕事の圧力が増えていきました。克服すると決心しました。自分の努力は段々効果が有りました。それも日本人が熱心に教えてくれたおかげです。
今では、仕事に少し疲れても楽しいと感じています。私にとって、日本に来たのは自分の選んだ厳しい道でした。でも日本に来てよかったと思っています。
皆さんにとっての日本の色はどんな色ですか?
私にとっての日本の色は日本で生活するにつれて、だんだん虹色になってきました。
4年前に入国した時は、知らない国に対する期待や好奇心もありましたが、文化も生活も違うので、不安や恐怖の方が大きかったです。
あれから、1年ずつ時が経過するにつれて全てがよくなってきました。初めに感じた生活や文化の違いに対する不安や恐怖はなくなり、私は気づかないうちにここでの生活に溶け込んでいました。
今では、仕事や生活を共有する友人たちと過ごす時間が私の人生の一部になりました。
日本は私にとって第二の故郷だと自信を持って言えます。
日本は東アジアの島国であり、伝統と現代の素晴らしい融合です。ここは多様な文化、深い知識そして先進的な技術で知られています。東京、大阪、京都などの大都市は日本社会の豊かさと活気を反映していますが、白川郷のような伝統的な村々は伝統的な生活を鮮明に表現しています。寿司、ラーメン、天ぷらなどの独特の料理は国の象徴となっており、桜は美しさと精緻さを象徴しています。日本を探索すると、この国の多様な美しさと驚異発見することでしょう。
日本にはいろいろな習慣があります。よいものもありますが変なものもあると思います。私が変だと思う日本の習慣は挨拶の時におじぎをする習慣です。日本人ははじめて会う相手と挨拶をする時必ずおじぎをします。これはいいと思いますがたまに電車の中や街中で、さらりーまんがでんわのあいてにおじぎをするのを見ます。これは変だと思います。外国人はおじぎより握手をします。あくしゅのほうがフォーマルではないがしんみつさがあります。日本人も握手を採用したほうがよいのではないかと思います。
2024年の「新語・流行語大賞」に、「ふてほど」が選ばれました。
これは、昭和から令和の時代にタイムスリップした主人公が、時代、世代、個人間に存在する差異や価値観に戸惑いながらも奮闘する、というテレビドラマに由来するものであり、世相を反映するものとして共感されたものです。価値観の違いは、異文化間にも存在するものであり、技能実習生の失踪の原因の一つと言っても過言ではありません。
私たちは、不慣れな外国生活の中、日夜実習に励んでいる技能実習生に対し、今年も監理団体として十分サポートを行ってまいります。
(E.S)